[920]官業と民業

耐震性能を偽装した姉歯建築士事件は世の中を震撼とさせる事件です。もしかしたらこれは氷山の一角かもしれない。建築主が圧力をかけ、設計士に耐震性能を偽った書類を強要し、その検査が見過ごされてしまう。このようなことが他にも無いとはいえないところにこの事件の恐ろしさがあります。建築業界はショックでしょう。

しかし、不動産にまつわる瑕疵事件や詐欺事件は今回に限らず、大昔からあったことです。詐欺が多い不動産取引だからこそ、色々な資格や法律が整備されてきた。その隙間を縫ったような事件が今回の事件です。つまり買った人には申し訳ないけれども「つかまされた」ということです。

今回の事件で少々驚いたことがあります。それは建築確認という建物審査を民間企業が行なっていたという事実です。建築確認はいわばお墨付き。お墨付きといえばお上のもの。お上といえば政府です。つまりこれは本来は国の仕事なのです。

それを民間に任せればそこに競争の原理が働き、利益追求そしてコストダウンを目指さなければなりません。検査機関がコストダウンや利益追求すればそこに歪みが生じて、本来の検査という仕事が歪む恐れがあります。

小泉さんは「民でできることは民で」とよく言いますが、民でできないことはやはり官で行なわなければなりません。また民でできることであっても敢えて官が行なわなければならない仕事もあるはずです。世の中利益よりも確実性を優先する仕事もあるのです。そういう意味では民間企業となった道路公団も心配の種です。品質の悪いすぐに陥没するような高速道路。考えただけでもぞっとします。そんな道路作らんといてね。