[922]埋蔵量の謎

たしか1973年のオイルショックの頃だったと思います。あと30年で石油は枯渇するといわれていました。そして今年2005年。あれからまさに30年以上たったわけですが、どこからも「石油が枯渇した」なんて話はありません。公道を悠々とクルマは走っていますし、ガソリンスタンドもセルフスタイルになって益々盛んです。

現在の石油の採掘埋蔵量はあと40年とされています。枯渇するどころか、延長されてしまいました。しかも、この40年もじつはあてにはならないのです。どうしてこのようなことが起こるのかというと「埋蔵量」という言葉にそのからくりがあるのです。

この埋蔵量というのは「経済的に見合うかどうか」によって決まります。身近なものであるガソリンでたとえましょうか。

ガソリンは現在1リットルあたり約120円です。このガソリン作るのに原油を掘ってそれを製品にするのですが、それらのコストが例えば80円とすれば、40円儲かります。儲かるならば事業として生産することが可能です。

しかし、原油の埋蔵されているところが、地中奥深い場合は、掘り出すのに大変お金がかかります。そのお金をかけて製品にしたら150円になってしまった。これでは売れませんし、事業としても成り立ちません。そのような場合は、たとえ地下に石油があったとしても埋蔵量はゼロなのです。このように、埋蔵量というのは採算が合うかどうかで判断されるため、時代背景によってはころころ変わってしまうという事態になってしまうのです。

では経済的埋蔵量ではなく実際の石油の埋蔵量はどれくらいあるのか?ということですが、これは実際のところよく分かっていないというのが実情です。石油というのは古代の海中に住むプランクトンが堆積して加圧されできたものという有機説がありますが、一方で地球の奥から浸潤してくる炭素が化成して石油になるという無機説もあります。後者の説が事実とすれば、それこそ埋蔵量は無限となります。

もう一つの例として、鉄。地球の核はさらさらの水のような鉄で満たされています。この鉄を埋蔵量という言い方をすればほぼ無尽蔵です。しかし、この鉄を取り出そうとすればそれはそれはお金がかかります。その鉄を掘り出してもコストが掛かりすぎて、製品にするにはとても合わないでしょう。そのような場合は経済的には鉄は有限であるといえるのです。

身近な地球ですが分かっていないこともじつは多く、そのために経済社会も振り回されているのが現実です。

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