[365]蒸留酒のルーツ「バーボン」

2013年9月26日

お酒というのは、簡単にいうと原料の糖分が発酵し、それがアルコールが変化してお酒になります。これを醸造といいますが、原料の違いや発酵を促す微生物によって色々なお酒(醸造酒)ができます。醸造されたお酒を蒸留するとアルコール度の高い蒸留酒ができます。

お米を醸造すると「日本酒」。それを蒸留したのが「焼酎」。麦を醸造すると「ビール」。それを蒸留すると「ウイスキー」。ブドウを醸造したのが「ワイン」。それを蒸留すると「ブランデー」です。醸造酒はまったりとしたフルーティな味わいが魅力であり、蒸留酒はスッキリとたピュアで薫り高い味わいが特長です。

蒸留酒の中でもルーツといわれるのがバーボンです。ウイスキーといえばイギリスのスコッチウイスキーが有名ですが、アメリカにもすばらしいウイスキーがあります。それはバーボンと呼ばれるウイスキーです。バプティスト派の牧師エライジャ・クレイグが樽を焦がして造ったレッドリカーがその原形で、ケンタッキーを中心に1789年その製造法が確立されました。

ウイスキーは蒸留して作るお酒で、原料は大麦、ライ麦、モルト、とうもろこしなどです。この中で、とうもろこしを51%以上使ったものをバーボンと呼びます。通常は60%くらいの割合で作られているようです。

また酒造りには良い水が欠かせません。普通、水には鉄分が含まれていますが、この鉄分はウイスキーの仕上がりを極端に悪くしてしまいます。ところがアメリカのケンタッキー地方は石灰岩の地質のため、湧き水に鉄分がまったく含まれないといいます。まさにウイスキー作りに適した水があったわけです。

またケンタッキーには良質のホワイトオークがたくさん自生してました。その中でも山の南の斜面に生えていたホワイトオークは糖質が多く、樽にしたときにその糖質がバーボンに深いコクと甘味を与えるのです。このホワイトオークは、バーボンを寝かせるのに最適なベッドとなります。樽は内側を焦がして使いますがこれもバーボンに独特の香りと色をつけるのに役立っています。

また、ケンタッキーは西部開拓時代に良質の穀物の栽培に成功した地です。売れ残った穀物を何とか再利用したいという思いが、ウイスキーにするというアイデアを生みました。良い材料と良い水、そして良い樽に恵まれたケンタッキーで良質のバーボンが生まれたのは偶然ではなく、まさに必然と呼べるものです。

バーボンはウイスキーのつもりで飲むとその味の違和感に驚くと思います。しかし、そんなテイストも、アメリカ西部の開拓時代を思い浮かべるには良い材料となるのではないでしょうか。

アメリカでは1920年に禁酒法が制定され、バーボンメーカーも苦難の道を余儀なくされます。薬としての販売許可を得るもの。他の事業で何とかきりぬけるものなど、メーカーの苦労はつきません。今でこそ芳醇な香りを私たちに提供してくれていますけどね。そんな苦労話も、バーボンの酒のつまみとなりましょう。