[356]捨て印

2013年5月18日

契約書などを書くときに欄外に同じ印鑑を捺しておくことがあります。これを捨て印といいます。

捨て印は後になって、あるいは契約の当人のどちらかが不在の時に、書類の訂正が必要になった場合に使います。印鑑が手元にあれば、訂正個所を確認してそこに押すのが本来のやり方ですが、契約書の提出先の人が本人から頼まれて訂正する場合や、契約書に押した印鑑が手元にない場合に必要になります。訂正の内容に合わせて、すでに押してある捨て印のそばに「〇文字訂正」「〇文字削除」などと書き込むわけです。いわば事前に捺しておく訂正印です。

捨て印は事務手続きを円滑にするために、軽微な書き損じの訂正にのみ使うのが原則ですが、使い方によっては契約の趣旨が変わるような訂正をされる可能性もあるので、むやみに押さない方がよいでしょう。信頼できる相手に限るべきでしょうね。

実印を使って契約する場合。これは同時に印鑑証明が必要ですが、印鑑証明が必要なほどの大事な契約に捨て印をしてはいけません。訂正が必要な時は、書きなおすべきですし、万一訂正する時もそれを確認した上で訂正印を捺すようにしましょう。

捨て印ではありませんが、契約内容が完全でないもの、白紙委任状(何も書いていない委任状)、金額欄に金額が書きこまれていない契約書などにははんこを捺してはいけません。あとでとんでもない契約書になっていたりします。

なお、契約の内容が大幅に変わるような場合や金額欄の訂正に伴う捨て印は無効とされる判例もあるようです。捨て印があっても一方的な契約書の改ざんは犯罪になりますから。

大事な書類には捨て印は捺さない方が無難ですね。