[1043]おふくろさんの著作権

森進一を世に知らしめた名曲「おふくろさん」をめぐって騒動が起こっています。事の起こりは、森進一氏が歌詞に独自のセリフを加えて歌ったことに端を発します。それを知った作詞家の川内康範氏が「私の歌じゃない」と怒ったうえ、以降その歌を含めた自分の曲を森氏に歌わせないと公言しました。森氏は一旦は対決姿勢を見せましたがその後一転し謝罪するも川内氏の激怒は収まらず、訴訟に発展しそうな勢いです。

作詞家による「歌詞」は著作権という権利に守られています。著作権にはその著作者に付随する、譲渡不可能な「著作者人格権」と譲渡可能な「著作財産権」があります。

著作財産権の中に「同一性保持権」というのがあり、これは「自分の著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利」です。森氏のセリフ入り「おふくろさん」はこの同一性保持権を侵害したことになります。他人に権利が渡っても、著作物本来の形は守られるのです。

もし、この「おふくろさん」の著作権(財産権)が金銭によって森氏に譲渡されていたら、こういった問題は起きなかったと思いますが、川内氏は作詞家として自分の名を連ねており、著作者として世間に主張しています。

それ以前にこういった著作権の問題は「無断で行う」ことで問題になることが多いのです。どんな著作物でも「事前に」それを改変あるいは流用することを打診して、了解をとればなんら問題ありません。了解は有償の場合もあるし無償の場合もあります。

今回の件にしても、事前にセリフを加えて歌いたい、と川内氏に了解を求めれば、おそらくOKが出たのではないでしょうか?

どんな場合でも、事前承諾を得ておくことはビジネス界では常識です。それを怠ったあたり、川内氏が指摘するように、森氏には驕りがあったのかもしれません。

では「編曲」の場合はどうなんだ?と疑問になるかと思いますが、編曲も著作財産権の関係で勝手にはできません。これは翻訳権・翻案権などに該当し無断で行えば「著作物を翻訳、編曲、変形、翻案する権利」を侵害することになります。

もっとも、これはプロの世界で金銭が絡む場合には問題になるのであって、アマチュアが編曲して演奏するのは普通は問題になりません。しかし、厳密にはアマチュアであっても歌詞の改変、および編曲を無断で行えば著作権の侵害であるとはいえるのです。

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著者プロフィール

たまごや
1954年1月東京中野区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。現在茨城県にて有限会社たまごや主催。独自の視点によるコンテンツの発信と「感動の園芸・儲かる農業」をテーマとした肥料販売サイト「たまごや商店」を手がける。