[038]人事異動(3)

2012年10月12日

 

前回の配置転換や転勤は同一企業内の人事異動ですが、人事権は場合によっては他企業で就業させることもできます。その人事異動の種類は出向と転籍です。これは配転や転勤よりさらに労働者の生活に重要な影響を及ぼすことが多いので、より慎重さが求められます。
 
【出向】
 
出向とは雇用関係は自社そのままですが、勤務地が他社になります。労働の指揮監督は出向先の会社から受けることになります。しかし給与は自社から支払われます。当然就業内容も変わりますので、労働者としては重要な影響を受けることになります。したがって出向については原則としてその労働者の同意が前提となります。
 
出向については事前に労働協約や就業規則に「出向することがある」旨を明記している場合が増えてきていますので、一度確認してみると良いでしょう。就業規則に明記されている場合は、同意が無くても命令できると法律上は判断されます。
 
【転籍】
 
転籍は事実上、自社の退職、そして転籍先会社への就職が同じに行われるものと解釈されます。つまり転職と同じです。これは出向よりさらに労働者にとって重大な影響を及ぼしますので、本人の明確な同意が無い限り許されることではありません。
 
***
 
出向も転籍も、リストラのあおりを最近では激増しています。出向先で取締役として就任するとか、転籍先の社長になるというようなレベルが上がるようなものなら歓迎されるべきですが、実質リストラの一環、首切りとしてなされる場合も少なくありません。出向転籍を命じられたら内容をよく吟味してから返事をするようにしましょう。
 
私の務める会社でも、3年前に出向してきた社員がおりますが、最初2年ということだったのになぜかいまだにいます。出向元は地元の銀行なのですが、考えてみたら銀行にいてもしょうがない時代だし、このままこちらの会社にいたほうが良いとは言えます。
 
出向転籍、悲喜こもごもなようで・・・