[084]年休あれこれ(14)【計画付与】

【計画付与】

年次有給休暇(以下、年休)は労働者が自由に時季を指定して休みをとることができる制度です。

しかし実際には、経営者の年休本来の意義・目的に対する理解の不十分さ、年休をとらないのが当たり前みたいな意識の存在、また労働者における同僚や上司への気遣い、年休の目的・付与日数についての自覚の欠如、などが年休取得への妨げとなっているのが現状です。

そこで、労使協定により、有給休暇を与える時季に関する定めをし、それによって年休を計画的に付与することができるようになっています。

ただし、各労働者の持つ休暇日数(前年度の繰越分を含む)のうち5日を超える分のみがこの規定の適用をうけます。(労基法第39条第5項)

たとえば年休未消化分が20日あったとします。このうち、5日を超える部分である15日は、労使協定の定めにより、使用者は時季を決めて計画的に付与することができるとするものです。残りの5日は労働者が自由に時季を指定できます。この方法ですと、事業場全体として休業日を定めて一斉に付与することができます。

しかし、個人的に時季を指定してとりたい人にとっては、休みたくないときに年休を消化させられてしまうなど、心情的に的に面白くないことがあるかもしれません。欧米では年休の消化率は100%近くなっていますが、日本ではほぼ50%。年休消化のための苦肉の策といえますので、もしこういう制度があれば賛同していただきたいと思います。

また、年休を一斉に付与すると、残りが5日未満になってしまう人がいる可能性があります。この場合でも、自由取得部分の5日は保証されなければなりません。そのために、不足してしまう人には、年休を増加して与えるなどの配慮が必要です。

年休の計画的付与の制度については、労使協定によりますが、就業規則に規定しておくことも必要です。この場合の記載ですが、既に就業規則上で所定休日となっている年末・年始の休暇、祝祭日などは計画的付与の対象にはなりません。新たに休日を設けたいときに、計画的付与の制度を利用することができます。

なお、この計画的付与によって労働者の年休の時季が指定された場合は、労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権はともに行使できないとされています。(昭63.3.14基発第150号)