[119]退職金あれこれ(-4-)死亡退職金

【死亡退職金】

社員が死亡したときは当然退職になりますから、退職に関する規定がある場合はその規定に基づき退職金を支払わなければなりません。

その場合の支払い相手ですが、会社では就業規則の退職金規定で、死亡した場合の退職金の支払い先を指定できます。

死亡退職金は、1.就業規則(退職金規程)等で定められている場合はそれに従い、2.定めがない場合は、民法上の相続人に支払います。

労働協約や就業規則、退職金規程等で、死亡退職金を誰に支払うかについて定めている場合には、その定めに従います。通常は無難なところで配偶者を指定する場合が多いようです。

この場合、死亡退職金の支払い順序も民法の遺産相続人や労働基準法施行規則の遺族補償の順位どおりでなくても構いません。会社が任意に定める支給順位に基づいて支払って差し支えないのです。

退職金は民法上では相続対象の財産なのに、なぜ退職金規定で支払い先が決められるかというと、遺族の財産争いが起きた場合に、へたをするとその財産争いが決着するまでの間、会社はその退職金を預かっておかなくてはならなくなるからです。面倒な争いに巻き込まれず、さっさと支払って終わりにしたい。そんなニュアンスが含まれているようです。

しかしそれでも遺族の間で争いが起きて、訴訟事件になるなど係争がが長引きそうな場合は、実務上の処理として供託などの措置を講じます。そうすれば、死亡退職金を会社がいつまでも管理する必要もなくなります。

ところで、就業規則等で支給対象者を例えば「妻」と定めた場合には、受給権者たる妻は、遺産相続人としてでなく、直接これを自己固有の権利として取得することになります。つまり支払対象者を「妻」と定めているときは、その死亡労働者に妻がなくとも、たとえ民法上の相続人(例えば兄弟姉妹)が存在していても、その相続人は、死亡退職金の受給権を持つことはできないのです。

もちろんこれは支払対象者についての定めがある場合のみで、定めがない場合は「民法の一般原則による遺産相続人に支払う」とされています。

万一の時、残された人のために退職金規定を確かめてみてはいかがでしょう?
(第63号加筆修正版)