[179]服務規律

【服務規律の意義】

服務規律とは就業規則の中に定めた日常の業務にかかわるルールです。労働基準法では特に服務規律については言及していませんが、判例では労働者には服務規律を含めた企業秩序遵守義務があることを認めています。企業秩序は企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠であるからです。但し服務規律についてはかならず就業規則に記述することが大切です。暗黙のルールというのは通用しません。

【よくある服務規律】

●政治活動の禁止

職務中に政治活動として行なわれたプレートを着用して勤務した例では、企業秩序維持の見地から就業規則により職場内における政治活動を禁止することを認める判例があります。また勤務中に勤務と関係のない政治活動は「職務遂行のために用い職務にのみ従事すべき義務」に違反したとされ「職務に専念すべき企業秩序を乱すものであった」と認定されています。

また、この事件では休憩時間であっても許可無くビラを配るなどの行為を禁止することを認めています。これは労働義務のない休憩時間であってもそういった行為は他の労働者の休憩を妨げる結果になるからということが大きな理由です。
※電電公社目黒電報電話局事件の最高裁判決(昭和52年)

●服装容姿について

髪を黄色く染めたトラック運転手に、これを黒く染め直すよう指示したにもかかわらず染め直さなかったためこれを諭旨解雇にした事件がありました。しかしこの場合は企業の円滑な運営上かつ合理的な運営を妨げるものではないとしてこれを退け、使用者の行なった解雇は懲戒権の濫用であるとして無効とされた判例があります。
※東谷山家事件の福岡地裁小倉支部決定(平成9年)

●物的施設の使用に関して

ロッカーや更衣室などは労働者が職務を遂行するために着替え等をする場所です。こういった場所に政治活動のためのビラやポスターを貼ったりすることは企業内の秩序を乱すものとして認定されます。このような場合にはビラやポスターをはがして現状復帰することとし、かつそれを行なった者には規則の定めるところにより制裁として懲戒処分も行なうことができるとされます。
※国鉄札幌運転区(国労札幌支部)事件の最高裁判決(昭和54年)

ただし、そのビラやポスターが企業内の秩序を乱すおそれがないと認められた場合は、就業規則に違反して更衣室に貼ったり、休憩時間中に許可を得ず配布したとしても、規定の違反になるとは認められず、処分を却下した例もあります。
※明治乳業事件の最高裁判決(昭和58年)

●労働者の企業外での行動に関する規律について

私生活における犯罪行為については、企業の名誉を大いに毀損するものであるという考えから、職場外の職務遂行に関係の無いことであっても規律違反とする判決が多いです。
※国鉄中国支社事件の最高裁判決(昭和49年)