[221]読者Q&A『退職時に競業避止義務を負う誓約書を書かされた』

■読者からの質問

誓約書に退社後1年間は同じ業種の仕事に就いてはならないと書いてありましたが訴訟された場合何らかの問題があるのでしょうか
また退職者が役員なら背任行為になるのでしょうか?

■たまごやの回答

お便りありがとうございます。例によってアバウトに答えさせていただきます。
行動を起こす時には関係省庁の窓口にてご確認ください。

『退職時に競業避止義務を負う誓約書を書かされた』

情報社会において、その社員が持ちうる技術や情報は日々重大になっています。その技術や情報を持ち出して他社に売る、あるいはそこまでしなくても、その技術や情報を元に今後の仕事に有利に使用することは大なり小なりありうることです。したがって、退職された側の会社としては、何とかしてその技術や情報を使わないように仕向けたいというのが心情です。

そこで、退職時に競業他社に就職しないことを誓約書に書かせることがありますが、残念ながらこの誓約書だけでは効力がありません。退職後の競業避止義務は要件があり、その要件を満たさないと効力を発揮しないのです。

まず、競業避止義務を負う社員は以下の2例です。

・特別な開発にかかわっていた社員
社の重要な開発にかかわっており、そのために特別な報酬を得ていた場合

・会社役員
会社の役員だった場合は、当然会社の機密を持って出ることになるので、競業避止義務を負うのは当然のこととなります。

お尋ねの場合、立場がわかりませんが、全くの平社員の場合は誓約書を書かされていてもまず競業避止義務の対象にはなりえません。たとえ訴訟されたとしてもその場合は問題にはなりません。

しかし役員の場合は誓約書などが無くても協業避止義務を負いますので訴訟されれば何らかの損害賠償責任は生じるものと思われます。

そもそも、社員に競業避止義務を負わせるには、就業時代よりその準備しておかなければなりません。

まず就業規則。この就業規則により「退職後を含めた競合避止義務」を規定する必要があります。同時にこの違反に対しては「退職金を支払わない」ことや、「退職後の一定期間内に同業他社への転職」あるいは「同業他社の設立」が判明したときには退職金の返還義務があることなどを明確に定めておきます。

さらに、就業中に退職時の競合避止義務を約した確認書などの特約を結ぶことも必要です。

こういった事前準備が無い場合、あわてて退職時に誓約書を書かせても競業避止を課することは不可能となります。

なお、顧客を意図的に大量に奪ったり、従業員を大勢引き抜いたりするなどの行為は背信行為となり、不法行為として損害賠償の対象になるので注意しましょう。不法行為による訴えには、就業規則等の特約は不要なのです。

参考コラム:

競業避止義務
競業避止義務違反に対抗する