〔44〕愛想の良さとぽっちゃり感

実は私はこう見えても(って見えないか)自分の身体や健康に気を使うタチである。以前“自律神経”系の病気にかかったせいもあるが、20代後半に差し掛かり「疲れが取れてないかもしれない」という恐ろしい事実に直面して以来、「やべーな」という自覚に目覚めた。

日々必要とされるビタミン系やホルモン系のサプリメントを必ず持ち歩き、時間のある時はダンベルを使った効果的な(?)運動もしている。またその疲れが肌に出ないようにするために、黒酢やコラーゲン飲料も愛飲し、この間は非常に高いプライスのパックも購入してみた。

正直言わせてもらえれば同世代の女の子の中では、せめて中の上くらいには入るだろう、と思っていた。言い換えれば、私のような「ちんくしゃレベル」ではそうすることがあたりまえであり、またそれが“外で働く30女の最低限のたしなみ”なのではないか、と思っていた。これだけやっておけば、これから更に厳しくなる「サバイバル戦線」をなんとか生き残れるだろう、と。

ところが、だ。うちの部に増員というかたちで25歳の女の子が入ってきてから「果たしてこの“しじみ理論”は少々間違った方向へ進んでいるのではないか」という素朴な疑問が生まれ始めた。

その25歳の彼女は(仮にAちゃんとしよう)、よく言えばぽっちゃりした内山理奈、もっとズームアップしてリアルな表現を使うのであれば、笑った顔が柔道のやわらちゃんに似ている。

妹分にするなら、安心して傍らにはべらせておける、問題のないタイプだ。

世の中の全ての女がもっているであろう“勝ち負け感”で心の中を表現するなら、「私の勝ちね。私、まだまだ若い女には負けないわよ。はは」だった。つまり、彼女を一目みた私は「勝った」と思ったわけだ。

まそんなこんなで、私とAちゃんは派遣の「先輩」「後輩」として、今現在仲良く仕事をこなしているわけだが、先日お別れ会で普段は飲みに行かないような人達とも飲んでいた時、そのAちゃんの話しになった。

「そういえばさ、しじみちゃんの部に入った派遣のAちゃん、すごくかわいいよね?」「そうそう愛想はいいし、ぽちゃぽちゃしてるところなんて最高」「今度一緒に飲みにいかせてよ」「若いっていいよな」

などと男どもは口走り、Aちゃんを褒めちぎっていた。つまり、それは私の期待を裏切るほどの評判の良さだったのだ。

どちらかといえば「年はとってもかまわない。でも年相応の美しさと強さが欲しい」と考え、マドンナの肉体、聖子ちゃんの計算された立ち振る舞い、それらを目標とし、自己流に分析してきた私だったが、それは今の時代に見事に逆行していたのではないか、と私ははたと感じたのだ。

Aちゃんがもっている天然の「愛想の良さ」と「ぽっちゃり感」これが今の男ウケする女の武器なのだ。井川遥ちゃんが(なんの取り柄もないのに)あそこまでブレイクしたのもそのせいなのだな。

よく一緒に飲みに行く(素で話せる)男に試しに言ってみた。「ねーねー、私も明日から営業の人が出かける時、小首かしげてかわいく“いってらっしゃい”とか愛想よく言ってみようかな」

するとこんな答えが返ってきた。「はぁ?!あんたマジで言ってんの?そんなこと突然したらみんな気持ち悪くなって、会社に戻ってこれなくなっちゃうよ。“男ウケ”しなくたって、今のしじみちゃんなら十分生きていけるでしょう?」

それ、どういう意味??

2002.04.12

〔43〕異業種交流会?

ある組織というものに属していると、それにどっぷり浸かってしまうことがある。それを楽と感じるか、苦と感じるかはその人次第だが、私はプライベートな時間まで組織に縛られていると気付くと、それがむしょうに嫌になってくる。

最近の私は、いつのまにか“会社の人達”とプライベートな時間を過ごすことが多くなってきていた。残業後、ご飯を食べに行く、休日に野球部の応援に行く、、、。何かにつけ、“会社の人達”が近くにいたのだ。

「なんだか最近パッとしないな。世界がだんだん小さくなっていきそう」

そう思っていた矢先、久し振りに合コンに誘われた。「みんな社会人なんだけど、若い男の子ちゃんばかりなの」「場所は新宿よ。高いビルのてっぺんにある、夜景の綺麗な飲み屋さん」社会人、若い男、新宿、夜景、てっぺん、、、その断片的なフレーズはなぜか私にノスタルジックで、かつ新鮮な気持ちを呼び起こし、急にうかれてきた私はその合コンに嬉々として出向くことになったのだ。

結果から話すと、それは非常に実のある合コンだった。相手の男の子は24~27歳くらい。カッコいい悪いは別として、全員お喋り好きの好青年という感触で、非常に面白かった。

会社の人達とご飯を食べ、休日にも会い、話す内容といえば、誰かの悪口か会社そのものの不満、また仕事の話し、そんなものにどっぷりつかっていた私にとって、彼ら若い男の子の話しは、ただただ聞いているだけで面白かったというわけだ。

その中でこんな話しが出た。「オレ働いて初めて気付いたんだけどさ、社会って出会いないよね?」「だよなー。いいこと考えた。今ここにいる仲間だけで、社会人サークルみたいなの作らない?みんなそれぞれ違う会社にいるわけだし、カッコよく言っちゃえば“異業種交流会”みたいな。社会の動向を知りながら、そこで出会いも探せるみたいな会!年齢には上限なしで。」

この思ってもみなかった発案には、私達女グループも盛りあがり、まさに仮想現実の世界と言わんばかり、「じゃ、ここをこうしよう」「あそこをああしよう」と後半からは一気に盛りあがったわけだ。

気付けばこの合コン、特にカップリングになる人など存在せず、いやらしい空気すら微塵も漂わず、その変わりに異様な盛りあがり方をみせ、「じゃ、またね~」で爽やかにおひらきになった。

帰りがけ、「いや、若い男の子ちゃんってパワーがあっていいね」なんてばぁさんみたいなことを言いながら、この“異業種交流会企画”はその場だけのものだろう、と私達女グループの誰もが感じていた。

しかし、これが違っていた。

なんと2日後にはもう「青山の某クラブを貸し切り、そこでまず第一弾として一大イベントを開こうと思う」というメールが私達女全員に入ってきたのだ。

“クラブを4時間借りるから、そこで30万として、フライヤー作りが約2万、簡単に計算すれば200人集めて1人から2000円取ればもと取れるよね”という大雑把ではあるが、わかりやすい計算も出来あがっていた。

素晴らしい行動力。

それはとんとん拍子に進み、私達は「第1期同志仲間(?)」として、そのイベントで活躍してしまったわけだが、これがまた意外な盛りあがりをみせ、面白かった。

これってなんだろう。“男女のいやらしさ”という枠からちょっとハズれた、同志団体?とでも言えばいいのかな。

会社がらみの疲れた生活を送り、「これからどうすればいいんだろう」などとただ、周りに流されていた私。それに思いがけない新風を送り込んでくれた“同志達”。

これからもイベント絡みのいいお付き合いが続いて行きそうだ。

2002.04.05