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[08]地蔵橋と紙芝居

第8回

■地蔵橋と紙芝居

地蔵橋と云えばその後ろに小さな公園があって、そこらはバタ屋だの乞食だのが屯していて夜には近づけない場所でした。其の地蔵橋には時々人魂(ひとだま)が出る・・・なんて噂も良く聞きました。あるとき地蔵橋に人だかりがするので、見に行ったこともありましたが、ねずみ色の着物を着たお婆さんが大して水もない川の淵で死んでいるのが見えました。川ッ淵の泥の中に頭から突っ込んだ形ですから顔は見えませんでしたが、多分お婆さんだったろう・・と想像です。側に燐がポーッと燃えてることは見ましたが人魂ではありません。

昭和通りに面したこの辺は昔は本石町と云ったらしいですが、子供の頃は本町と云っていました。丁度前述の大森ビルの並びにポツンと郵便局がありました。歩道の前に赤いポストがあり、此の歩道は幅が広いのですが誰も歩いて居ません。子供らの絶好の遊び場でした。少し先に小さな路地があって、その曲がり角の二階家が私の家でした。一階は倉庫で路地の横に玄関があり、入ると四畳半と台所で、階段を上がると六畳二部屋となっていました。

玄関を出ると向かい側に畳屋があって、そこの坊主と私は同年で遊び友達でした。その時其の畳屋に大福帳が何冊か掛かっていて、それに昭和五年と書かれて居るのを見ました。昭和五年と云えば私は三歳の時です。まさか三歳で昭和五年と云う漢字が読めるはずがありませんから、きつと古いものだったのかも知れません。

丁度その路地の奥に毎日「紙芝居」のおじさんが自転車でやって来ます。子供達の唯一の楽しみは紙芝居だったのです。そのおじさんが来て拍子木を叩くと沢山の子供達が集まって来ました。だけど一銭の水飴か変なおせんべいを買わなくては見せてくれないのです。私は持っていた小さな小さながま口を出して中を見たら一銭銅貨が10枚ほど入っていました。どうしようかな?と考えているうちに、ひょいと上を見ると母親が頭から角を出しているような怖い顔をしてにらんでいるんです。

だけど紙芝居は見たいのですから紙芝居のおじさんに頼んで拍子木を叩きながら町内を歩くことをするんです。一回りして来ると紙芝居のおじさんはお駄賃に割り箸に巻いた水飴と紙芝居をタダで見せてくれるんです。

紙芝居は大抵二本立てで「黄金バット」か貧乏な娘の可哀想な物語で、又明日のお楽しみ・・・で幕です。大体10分くらいのものでしたが子供達には人気があり、紙芝居のおじさんは話がすごく上手でした。
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