[314]続・お見舞いのマナー

前号の続編です。

 5月に入院して昔に比べ全般的にお見舞い客が減ったような気がしました。少子高齢化社会、核家族、有職主婦の増加、隣近所や会社での人間関係の希薄さ、そんな社会現象の表れのようにも思えます。いざとなるとお見舞いに行くべきかどうか、お見舞い品はどうしたら良いか判断に悩む方も多いでしょう。この場をお借りして患者の立場からアドバイスをしたいと思います。

 まず、患者は具合が悪く、パジャマ姿で女性ならメイクもしていないという無防備な状態ですからうれしくない訪問客には会いたくないものです。ふだん親しくもないのに押しかけるのは物見遊山のようで印象が悪く、あるいは儀礼上仕方がないと思って行くのなら双方楽しくないので差し控えたほうが良いと思います。「早速お見舞いに伺いたいところですが、今は安静が何より大切だと思いますので」というような文面のお見舞い状を添えてお見舞い品を贈るほうがスマートです。また、退院後に「退院お祝い」や「様子伺い」といった形で自宅を訪問する形式も、患者が自然な状態で(家族の手助けも得ながら)面会ができます。

 お見舞いに行く場合はいきなりではなく、本人か家族に都合や面会許可時間などを確認してから。かつて 1日 2時間ほどの間に 4組、合計11人のお見舞い客があり、疲れて高熱を出した経験があります。

 上記の確認をする際、お見舞い品は何が良いか、患者が困っている事はないかをたずねます。病室は広くはありませんし、医療器具を持ち込むこともあります。不要な物をいただいても「ありがた迷惑」となります。たとえば、生花ばかり重なると水の取替え、枯れたら生ゴミとしての処理など患者自身がやらなければならないのならかえって負担になります。また、病院食は治療の一環でその病気に対応した内容やカロリーになっていますので、むやみやたらに食品をお見舞いに持っていくのも避けたほうが良いと思います。今回の入院でも高級なお菓子をいただくよりは、ミネラル・ウォーターかスポーツ・ドリンクをいただきたかったです。コンスタントに消費するものですし、これらをまとめて買ってくるのは手術後などちょっと辛いものがあります。

 公衆電話や自動販売機を多用する場合はお見舞い金をかねて硬貨をを美しい箱に詰めて差し上げるのもアイデアです。また、すでに読んだ雑誌などを友人たちと持ち寄って差し入れるのもお金がかからず気のきいたお見舞い品となります。捨てても良いのなら退院時の荷物にもならないからです。入院が長引くようなら、カーディガンなどはおるもの、パジャマ、ソックス、タオルなどの新しいものが気分転換に良いかも知れません。患者が退院した後、あるいは回復した後には患者側から「快気内祝」をご迷惑をかけた方々へ贈るのが通例となっていますので、過剰なお見舞い品は患者にとってかえって負担になります。形式的なお見舞い品よりは患者にとって本当に役立つもののほうが心に残ります。

河口容子

誰でもなれる国際人