[130]家内

家の内(なか)と書いて「かない」と読みます。家内とはつまり奥様のことであり、元々は家の中を仕切る人、という意味です。「奥」様も同じような意味があります。戦国時代は女人たちは城の奥に居てご主人様の世話をしました。その名残で「夫」のことを「主人」といい、「妻」のことを「家内」と呼ぶようになったのです。

しかし、現代は戦国時代ではないですから「夫」のことを「主人」という、あるいは「妻」のことを「家内」というのはいかにも時代錯誤です。現代においては「妻」が「家にいる人」ではなく、またその「夫」は決して「ご主人様」ではないからです。なかにはこういう封建的な表現は差別につながるので使うべきではない、と口角泡を飛ばして論説する人もおります。

しかし社会通念上、自分の夫もしくは妻を第三者に紹介するとき、「主人」あるいは「家内」はもっとも違和感のない表現であることも間違いありません。言葉そのものが本来の意味から一人歩きし、本来の意味と違った使われ方をしている典型的な例といえます。そしてそういう意味ならば『「家内」を封建的でけしからん』と無下に却下することもなかろうと思うのですが。

では第三者に自分の妻あるいは夫を紹介するときはどうしたらいいでしょう?

そういう時は「私の妻です」あるいは「私の夫です」というのが一番差し障りがない表現です。「私の女房です」というと中には女性を見下していると勘違いする人もいると思いますが、「女房」は差別用語ではありませんので使っても構いません。

ちなみに、女房とは昔々宮中に仕えた身分の高い女人をいいます。女房の「房」とは部屋という意味で、宮中に仕える「女房」とは特別に部屋をもらって帝のの身の回りの世話をする身分の高い女官のことをいいます。妻という意味ではないんですね。

「亭主」というのも夫という意味ですが、これは最近は「ダメ亭主」というイメージがぬぐえませんので、あまり使わないほうがいいでしょう。一番いいのは「マイハズバンド」あるいは「マイワイフ」と英語を使ってしまうのも手です。

なお「ご主人様」というように「様」をつけるのはやめましょう。違う意味に取られないとも限りませんので。