[046]セクハラと紛争

2012年10月12日

 

均等法21条により、企業にはセクハラが起こらないように配慮する義務があるわけですが、不幸にも実際にセクハラが起こり、それに対処する段になった場合は更に配慮が必要になります。
 
セクハラに抗議すると言うことは、下手すると企業を相手取ることになりますが、この場合、企業は解雇という手段に訴えてはいけないのは言うまでもありません。これは解雇権の濫用に当たります。セクハラを受けそれを訴えたら今度は解雇された、とあっては踏んだり蹴ったりです。法はこの点を厳しく取り締まっています。
 
またセクハラを解決する意味で、当事者同士に退職を勧告するようなことは認められませんが、セクハラが解決したとしても、当事者を含む職場の雰囲気を是正する意味での配置転換は認められるとされます。この場合でも当事者に説明し同意を得ることが必要です。
 
均等法や労働基準法は、不当な扱いを受けた場合に、その大いなる味方となってくれますが、訴えられるあるいは抗議される企業はどちらかというと面白くないものです。
 
そのために、その抗議あるいは訴えられることに対する報復素措置を講ずることが多いのですが、そうなると女性労働者はなかなか辛いものがあります。そういったトラブル解決の糸口として、均等法は授業主または女性労働者いずれかが援助を申し出た場合は、都道府県の女性少年室長は両当事者に対し、必要な助言・勧告・指導ができると定められました。(第12条一項)
 
さらに、こう言った女性少年室長が勧告した後にも、またそのことに対して不当に扱うようなことがある場合は、それを禁じる項目が続けて設けられています。(同第二項)これは何を意味するかというと、いかに企業がこう言った女性労働者からの抗議を嫌い、また蓋をしたがるかの現われと見ることができます。
 
勧告や指導を受けても改善されない場合はどうするか?
 
均等法の改正により、今は紛争解決の調停をどちらか一方の同意により行えるようになりました。(今までは企業労働者両方の同意が必要でした。)調停は機会均等調停委員会が行いますが、実際にここまできて紛争を解決しようとした人はいるのでしょうか?私はそういう例は知りませんが、長い道のりであることには間違いありません。実例をご存知の方はご一報ください。
 
なお、この調停はセクハラだけでなく、女性労働者と事業主の紛争全般にわたって行うことができます。つまり、女性にとって解決の場が近くなったということですが、実体は定かではありません。多いに利用して、実績を積み重ねていくことが大事だと思います。