[072]年休あれこれ(2)年休は理由を問わない

2012年10月14日

 

【年休は理由を問わない】
 
友人が年次有給休暇(以下年休)を取ろうとして請求したところ却下されてしまったという話を聞きました。年休請求する時には、会社に請求用紙が用意されていますが、その中の理由の欄に「スキー旅行」と書いてしまったのです。それを見た上司は「スキー旅行に年休はとらせない」と、こうきたわけです。
 
こういう上司を持った部下は不幸です。年休がとれないのが不幸なのではなく、今や常識となった「年休」の取り扱いについて、手取り足取り教えなくてはならないことが不幸なのです。
 
部下を一人でも持ち、仮にも上司と呼ばせるならば、その部下の労働管理を勉強するのは上司として当然の「仕事」です。にもかかわらず、勉強もせず、自分は年休などとったことが無いと自慢し、休まないことを美徳とし、それを部下に押し付ける上司は、旧態依然とした会社に多いです。そしてそういう会社は今きっとリストラで大変なはずです。
 
言うまでも無く、年休は理由を問わず取得することができます。ですが、請求用紙に理由を書く欄があるので、理由を書かなくてはいけないと思ってしまいます。ですが、ここは空欄でも構わないのです。それでもし差し障りがあるようなら「私用のため」あるいは「家事都合」とでもしておけば良いでしょう。請求用紙に理由欄が無い会社にお勤めの場合は、その会社の労務管理は大変進んでいるといえます。
 
判例をみてみましょう。「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨である」(S48・3・2最高裁第二小法廷判決)
 
つまり年休は病気に充てるも、長期のバカンスに利用するも、家でのんびり休息をするも、はたまた労働組合の大会へ参加することも自由です。そしてその年休利用理由すら申し出る必要がありません。
 
例外はあります。自社のストライキのために年休を利用することはできません。判例にもこうあります。「ストライキは年休に名を借りた同盟罷業にほかならない」(S48・3・2最高裁第二小法廷判決)ただし、他の会社のストライキに参加することは認められます。
 
年休は、労働者が安心して休める為の制度であり、理由としては急用などやむをえない事情で取得するのではなく、スキー旅行や静養の為の休暇こそ、年休の本来の目的と知るべきでしょう。