[140]業務命令

会社と労働者には労働契約が結ばれています。労働契約が結ばれると労働者には労働の義務、そして会社には労働を命ずることができる業務命令権が生じます。

業務命令は労働契約書や就業規則の内容に基づき、その労働者を管理監督する立場の人が発令することができます。この業務命令には労働者は従わなければなりません。管理監督する立場で無い人がほかの労働者に自分の仕事を押し付けるようなものは業務命令とはいいません。

業務命令には日常の制服の着用など細かいことから、残業命令、配置転換(職種変更、転勤)、在籍出向、転籍出向、出張、応援、派遣などがあります。いずれも正当な理由がある場合はこれに従わなければなりません。もし、正当な理由無く拒否するならば懲戒処分となることもありますので注意を要します。

業務命令といっても、労働基準法などの法律に違反するものや、労働契約や就業規則に違反するもの、労働者に多大な不利益を生じさせるもの、合理性がないものは、従う必要がありません。

退職勧告に従わず、嫌がらせで配置転換や職種変更など陰湿な処置が現実にありますが、これなどは「合理性がないもの」と判断されますので、そのような業務命令には従う必要はありません。

また、会社側で気をつけなければならないのが差別的業務命令です。性別を理由にしたものや、国籍信条や社会的身分を理由としたもの、労働組合員であることを理由にしたものなどは、従う必要が無いばかりか、そのような取り扱いを受けた労働者から損害賠償を求められることもあります。

なお時間外労働や休日労働に関しては三六協定という労使協定を締結していないと残業させることができません。大きな会社はほとんどの場合この協定を結んでいますが、小さい会社では担当者がそのような協定があることすら知らない場合もあります。そんなときにうかつに残業を命じますと厄介なことになりかねませんので、残業命令を出す必要のある会社は必ず三六協定を締結しておきましょう。