[199]あなたのそばにパワハラ上司

世の中の景気がよくなってくると、転職が盛んになります。今まで我慢してきた「できる上司」や「できる部下」はこぞってより条件のいい会社に転職してしまいます。その結果残ることになった「できない上司」や「できない部下」は、劣悪な環境で仕事を続けるしかないということになります。できない「上司」は仕事は増える一方なのに、できる部下はいない、その結果いらいらすることとなります。できない上司は仕事ができませんからなおさらです。

そんな環境の変化のせいでしょうか、東京都のまとめによれば労働相談の内容として「職場の嫌がらせ」が第5位にいきなり出てきたそうです。その相談の大半は、かさにかかった態度で部下をイジメたり嫌がらせをするパワーハラスメント。部下をほかの社員の面前で罵倒し、無理強いし、あるいは無視するというもの。

こういったパワハラは大企業では対策が進んでいるため減少していますが、一方で中小企業、病院、学校などではむしろ増えているといいます。相談者は30代が一番多く、50代が続きます。これはいわゆる自殺世代でもあります。

パワハラの例としては、サービス残業の「過少申告命令」があります。残業は業務命令として上司が部下に対し、行うことができますが、残業を命令しておきながら、会社には残業をしていないように申告させることは、パワハラどころか労働基準法違反という犯罪でもあります。しかもそれにそむけば、今度は嫌がらせの嵐となります。

たまたま上司と意見が違い、その意見をぶつけ合ったために「挑戦的な態度が気に入らない」とされ、評価が下がった例があります。個人的なことならいざ知らず、仕事のことに関して意見をぶつけ合うことはむしろ歓迎すべきことです。しかし、そのことを根に持って、嫌がらせに転じる上司はパワハラの典型的な例です。

物知りの上司によくある「ネチネチ上司」。物を知らなさ過ぎる部下にも原因はあるのですが「能力が低い」「文章が幼稚園児」「電話の話し方がヘン」などと罵倒します。会社においては上司も部下も同じ財産=人材であることには変わりありません。上司に比べれば部下は経験も少なく仕事もできないでしょう。だから仕事ができるあなたは上司であり、他方は部下なわけです。

こうしたパワハラは、セクハラと同じく本人が自覚していない場合が多いのです。パワハラをしている人のなかには、「私は口の悪い人間だから」「毒舌が私の特徴」などと偉そうに弁明する人が多く、しかし、ハラスメントは受け手がどう感じたかが重要であるため、「悪気はなかった」「激励のつもりで・・・」などと主張しても、受け手にとっていやだな…ととられれば、それは立派なハラスメントなのです。

権威のある立場の人の言葉や態度は、使い方によっては「凶器」にもなるのです。ちょっとした言葉が、のちのち大問題とならないよう、後先を考えて行動する必要があります。パワハラを受けた人も泣き寝入りをせず、断固抗議するなどのアクションを起こすことが解決の糸口となります。