[206]ホワイトカラーエグゼンプション

ホワイトカラーエグゼンプションが物議をかもしています。ホワイトカラーエグゼンプション(White Collar exemption=ホワイトカラー労働時間規制撤廃制度)とは、いわゆるホワイトカラー労働者に対する労働時間規制を適用免除することをいいます。

今までは8時間労働という縛りがありましたが、これを開放し、ホワイトカラー全員を時間管理ではなく成果管理に変更しようとするものです。2005年6月に日本経団連が提言を行ない、2006年6月に厚生労働省が素案を示しました。早ければ2008年度にも法律として施行される可能性がありますが、まだ決まったわけではありません。

今までの労働管理は時間管理がベースにありました。労働基準法でも謳われているように1日あたりの8時間労働がそれです。しかし、この時間管理は工場など生産現場では適合しますが、業態が多様化している現代社会では、制度そのものがそぐわなくなっている場面もあります。顧客に合わせて商談や打ち合わせを進めなければならないホワイトカラー労働者は、時間ではなかなか管理しきれないものです。

ホワイトカラーとは「管理職=白いワイシャツを着ているイメージなので」という意味ですが、管理職自体は年棒制度などで残業を含めた報酬になっています。しかし、その内容は8時間労働を基準として、残業分を見越した年棒になっているはずです。したがって大幅に労働時間が増えた場合は、年棒とは別に残業代を支払う必要があります。

しかしホワイトカラーエグゼンプションが導入されれば、会社は時間管理をする必要がないということになりますから、いくら労働時間が長くてもそれは個人で管理するべきもの、ということになります。

経営者側としては、達成すべき成果をもとに時間管理無しで経営計画が立てられます。また残業の増加による賃金変動を考慮する必要がありません。また、対象労働者の健康管理義務もなくなるのも経営者側のメリットといえます。

労働者側としても、同じ成果を導いた場合に時間をかけて残業してやった方が賃金が高くなるという不公平感がなくなり、労働者にとっても自由な時間の使い方が可能になるというメリットがあります。

問題点としては、短時間で成果を上げた労働者に対し、賃金はそのままで次々に仕事を与えてしまうという懸念があります。また時間管理がありませんから残業という概念も生じないことを逆手にとって、無賃金残業を合法化しようとする、という批判もあります。また最大の懸念は、労働時間を管理しないことによる労働者の健康管理がずさんになるという懸念もあります。

労働時間8時間というのはそれ自体長い歴史があり、人間の生活サイクルに密接した「8時間」ともいえます。この「8時間」が持つ意味ということも深く考えなければなりません。8時間労働という縛りが無くなった場合に、どのように人間の精神を含めた健康管理を確立していくのか、ホワイトカラーエグゼンプションの導入にはまだまだ議論が必要です。