[241]兼業禁止を禁止する動き

2012年10月29日

労働基準法に代わる(補完する?)労働契約法が国会で審議されています。このたび与党の案に対し民主党の対案が提出されました。よく議論して時代に合った労働環境を作るべく努力してほしいと思います。
 
この「知って得する労働法」でも兼業(副業)については何度も言及していますが、もともと職業は自由であるにもかかわらず、労働者が就業する場合に企業は労働者の兼業(副業)を禁止していました。今回の労働契約法の審議では、この兼業(副業)を禁止することを禁止することが盛り込まれているところが注目されます。
 
というのも、兼業(副業)を禁止するのは本業に重大な影響を及ぼす惧れがある場合というのが本質であるにもかかわらず、「就業規則で禁止できるから禁止している」という現状に問題があるからです。裁判においても、兼業(副業)の実態にかかわらず、就業規則に違反しているかどうか、が問われているからです。
 
厚生労働省「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」中間取りまとめ
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/06/s0615-6a.html
【兼業禁止義務】
使用者は、労働者の兼業を禁止し、又は許可制にする等の制限をすることがあるが、このような制限は一般に就業規則で定められるため、裁判においては、労働者がこのような規定に違反したかどうかの判断に際して、就業規則の規定を限定解釈することによって処理されているとの指摘があった。
労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であり、労働者は職業選択の自由を有すること、近年、多様な働き方の一つとして兼業を行う労働者も増加していることにかんがみ、労働者の兼業を制限する就業規則の規定や個別の合意については、競業に当たる場合その他兼業を禁止することにやむを得ない事由がある場合を除き、無効とする方向で検討することが適当である。
就業規則に決めることができるということは、それに違反したら「違反」に決まっているわけで、裁判を起こされたら勝てるわけがありません。こういった「勘違い」を是正するために、就業規則での「兼業禁止を禁止」し、兼業を大筋で認めようとする動きは歓迎すべきでしょう。
 
労働契約法にこういった考え方を盛り込むのは、世の中の就業形態が大きく変わってきたからです。WEB2.0といわれるようにインターネットでは個人の力が大きく評価される時代となっています。ネットを駆使すれば、個人が主体となって起業することも可能であり、当然そこから収入を得ることができます。個人の収入元が通常の給料とは別にネットからも収入を得ることができるのが普通になる時代が来るかもしれません。「兼業禁止の禁止」規定はぜひとも実現させたい規定です。