[296]断耳(だんじ)

ボクサーやドーベルマンなどは、精悍な躯体と顔立ちをしています。いかにも強いという感じ。しかし、これら出で立ちは人間が後から手を加えたものです。

ボクサーを例にとれば、ピンと立った耳、短い尻尾が精悍な感じですが、彼は本来大きな垂れ耳と立派な長い尻尾を持っています。それを生まれてまもなく人間が断尾・断耳するのです。なぜこのようなことをするかというと、猟犬や闘犬に使われる彼らにとって、大きな耳や尻尾は不都合だからです。

猟犬の場合は耳を立てて遠くの獲物の動きを察するため、垂れた耳を改造します。闘犬の場合は大きな耳や尻尾は、それを相手の犬につかまれて負ける可能性が高まるので切ってしまいます。また、ショービジネスにとって精悍に見えることは高い評価を得られ、そのことが人間の欲望を満たすからです。またそれが優秀なものとされてきました。よく考えると、いかに断耳・断尾が人間の身勝手な行動かよくわかります。同じ手術をするにしても、その目的が結果的に彼自身のためになる避妊手術や去勢術とは意味が違います。

ボクサーは一見黒く怖そうな感じですが、じつはやさしく人なつこい性格をしている犬です。家庭犬としてパートーナーとして一緒に暮らすなら、何も耳や尻尾を切って痛い思いをさせることは無いですよね。世間の習慣や飼い主のわがままで犬を虐待するのは時代に合いません。イギリスやドイツ・オーストラリアでは断耳・断尾は動物保護法によって禁止されつつあります。本当に動物を愛するなら当然の成り行きといえます。

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