[161]食後の歯磨き

食は人間の持つ三大欲望のうちのひとつです。したがって「食べる」ということはとても大事な作業。しかし、その後に歯磨きをしなくてはいけないという風潮があり、これが食の喜びをかなり損じていると感じます。どうでしょう?食後の歯磨き、めんどくさくないですか?

食後の歯磨きに関しては「しなければならない」という説と「別にしなくてもよい」という諸説があります。もちろん「しなくてよい」というのは少数意見です。どちらの説にも共通することは「食べかすは取ったほうがいい」ということと、界面活性剤の入った歯磨き粉は使わないほうがいいということです。

そもそも歯磨きには2種類有り、歯周病を予防するための歯磨きは歯肉のポケットを重点に丁寧に磨かなければなりません。この歯磨きは、朝起きたときと就寝前が効果的です。これはどの説にも共通して必要な事項です。

それとは別に、食後の歯磨きは、食べかすを除くことが目的となります。したがって歯磨きをするよりは、口をゆすぐほうが効果的ということができます。それには、歯磨きではなく、楊枝を使ったり口をお茶でゆすいだりするほうが効果的。というのも、食べかすは歯についているのではなく、舌や口腔内、歯茎の間などに多く残っているからです。

本来食後は唾液がふんだんに分泌されていて、その唾液は食後の消化を助け、口の中を殺菌する洗口作用があります。食後に歯磨きをしてしまうとこの唾液を失ってしまう結果になります。唾液は口臭を防ぐ一番の役者ですが、それが居なくなるため、歯磨直後はよくてもすぐに口臭がするようになってしまいます。

口臭に悩む人は、食べかすを口に残さない努力とともに、唾液の働きを見直す必要があります。洗口に気を使うあまり、口臭予防に不可欠な唾液を排除している場合が多いからです。

唾液はカルシウムやリンなどが含まれていて、これが歯の再石灰化に貢献しています。古い歯垢をためていたり、糖分をたくさんとる習慣があると、再石灰化はむずかしくなり、虫歯になっていきますので注意しましょう。

ところで、会社の食堂などで、食後すぐさま歯磨きを始める女子社員が目立ちます。こちらは食事中なのに、目の前で歯磨きを始められると落ち着きません。食べた場所で、そのまま歯磨きをしながら仲間と談笑するというのは周囲が全く見えていないのでしょう。化粧室という場所があるのですから、そこで身の回りの始末を付けることが重要です。何のための化粧室かよく考えましょう。

嫌煙権の普及で、さすがに食後すぐにタバコをふかす人は減りましたが、歯磨きや「うがい」も食事中の人にとって見れば同じように不愉快であることを再認識する必要があると思うのです。

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